シュヴァンヌ(ベエツ川) 昼下がり、駅前通りの舗道で、数人の男女がテーブルを囲んですずらんのブーケを作っていた。2、3輪の米粒ほどの花と、蕾と葉ばかりの束だ。「こんな小さなブーケが20フラン(四百円)だって?」今年はどうして高いの?」「天気が悪かったので、森のミュゲ(すずらん)がまだ咲かないのよ」「長いこと太陽が出なかったし」「寒かったから最悪だよ」・・・口々に言う。
予想はしていたものの、開花がこれほど遅れていたとは・・・。一年の<幸福をもたらす>といわれるこの一束がないと、五月を迎えた気がしない。痛々しいほど小さな蕾のブーケを、ワイングラスに挿す。

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